「全固体電池が出るまで待とうかな」
EVを検討している方から、この言葉をよく聞くようになりました。2026年に入って各社の発表が一気に増えたので、そう感じるのは自然だと思います。
ただ、ニュースに出てくる「2027年」という数字と、あなたがディーラーで契約できる日は、同じではありません。今日はその差を、できるだけ正確に整理してみます。
🔋 2026年は「パイロット生産の年」でした
まず現在地から確認します。2026年は、各社が試験的な生産ラインを動かし、実車への搭載試験を進めている段階です。市販車に載って店頭に並ぶ年ではありません。
トヨタは2027〜2028年の市場投入計画を維持していて、出光興産との合弁で硫化物系の固体電解質の量産体制づくりを進めています。出光は2026年1月に、トヨタ向け固体電解質の大型パイロット装置の建設を開始しました。
日産は2028年度の量産を掲げ、2026年4月に実車サイズの全固体電池セルを公開。ホンダも2027〜2028年の投入を計画し、日産とともに2025年にパイロットラインを稼働させています。
3社とも「計画」であって「発売日」ではない、という点は押さえておきたいところです。

📅 消費者が買えるのは、早くて2027年後半〜2028年
ここが今回いちばんお伝えしたい部分です。市場投入の計画年と、一般の人が普通に買える年には、通常ずれがあります。
初期のモデルは生産台数が限られ、価格も高くなるのが一般的です。普及価格帯まで降りてくるのは2030年代以降という見方が有力とされています。
つまり「2027年まで待つ」と決めた場合、実際には2028年以降まで待つ可能性を含んでいます。今のクルマがその期間もつのか、というのが最初の分岐点かなと思います。
⚠️ まだ埋まっていない壁が一つあります
技術的には、期待されているとおりの性能が出れば航続距離・充電時間・安全性の3点で大きな前進になると言われています。ただ、量産の手前で足踏みしている理由もはっきりしています。
硫化物系の全固体電池は、充放電のたびに材料の体積が変わり、固体電解質と電極の境目にひび割れが入りやすいとされています。数百回の充放電で容量が急に落ちる事例が報告されており、EVに求められる最低1,000サイクルという水準にはまだ届いていないという指摘があります。
この耐久性の問題が解けるかどうかで、量産開始の時期は前後します。ロードマップの年号を固定の予定として読むと、判断を誤りやすい部分です。
🌏 世界では「事実上の量産」がもう始まっています
一方で、海外に目を向けると景色が違います。車載向け全固体電池を実際に量産するメーカーは、2026年中に9社を超える可能性があると報じられています。
台湾のプロロジウムテクノロジーは第2世代セルの量産を2024年から始めていて、出荷量の累計は240万個に達したとされています。中国勢もCATLやBYDが2027年の小規模量産を目標に動いています。
ただし中国メーカーが公表する航続距離はCLTC基準の数値で、実走行では20〜40%短くなるのが通例です。1,500kmという発表を見ても、実際は900〜1,200km程度と読むのが安全です。カタログ値をそのまま受け取らない習慣は、EVでは特に大事になります。
🌉 「半固体電池」という中間地点があります
全固体の一歩手前に、電解質の一部を固体にした半固体電池という選択肢が出てきています。MG4 EVなどでは、すでに市販車への搭載が始まっています。
全固体ほどの飛躍はないものの、現行のリチウムイオン電池より一歩進んだ性能を、待たずに手に入れられる位置づけです。「全固体か、現行か」の二択で考えていると、この選択肢を見落とします。

⚠️ こんな人には「待つ」が向きません
ここまで読んで「やっぱり待とう」と思った方もいると思うので、待つのが向かないケースを先に挙げておきます。
今のクルマの車検が1年以内に来る方。全固体電池搭載車を待つと、車検をもう一度通すことになる可能性が高くなります。その費用と、待って得られるものを天秤にかける必要があります。
CEV補助金を前提に予算を組んでいる方。補助金は年度ごとに金額も対象も見直されるため、2〜3年後に今と同じ条件が残っているとは限りません。制度は縮小方向に動くこともあります。
年間走行距離が5,000km以下の方。航続距離が伸びることの恩恵をあまり受けません。今の航続200〜300kmクラスで十分足りている可能性が高いです。
自宅に充電環境を作れない方。全固体電池になっても、自宅で充電できない不便さは変わりません。技術ではなく環境の問題なので、待っても解決しません。
📊 今買う場合と待つ場合を並べる
判断材料として、両方の条件を整理しました。前提が変わると結論も変わるので、右の列を必ず確認してください。
| 項目 | 今買う | 全固体電池を待つ | この判断が当てはまらない条件 |
|---|---|---|---|
| 入手できる時期 | 2026年内 | 早くて2027年後半〜2028年 | 初期モデルは台数限定の可能性。抽選や長納期になる場合あり |
| 航続距離 | 200〜500km級が中心 | 大幅な向上が期待される段階 | 期待値であって確定値ではない。耐久性の課題が未解決 |
| 価格 | CEV補助金の対象車あり | 初期は高価格帯の見込み | 普及価格帯は2030年代以降との見方が有力 |
| 補助金 | 2026年度の制度を利用可能 | 数年後の制度は未定 | 年度ごとに金額・対象が見直される |
| 今のクルマ | すぐ手放せる | 車検を1〜2回追加で通す可能性 | 車検が3年以上先なら影響は小さい |
🚗 2026年後半、日本で実際に買えるEV
「待たない」を選んだ場合の選択肢も見ておきます。2026年後半の日本市場は、軽とコンパクトの層が厚くなります。
BYDは日本専用に開発した軽EVのラッコを2026年7月28日に発売します。軽で最も人気のあるスーパーハイトワゴンのEVは日本メーカーにまだなく、この区分では一番乗りです。航続距離は200km超と300km超の2スペック体制が確定していると報じられています。
ホンダのスーパーワンは2026年5月22日にすでに発売済みで、価格は339万200円、航続距離は274km(WLTC)です。ホンダは2028年中にN-BOXのEV版を投入する計画も示しています。
BYDはこのあと、コンパクトSUVのATTO 2とPHEVワゴンのシール6も2026年後半に導入予定としています。選択肢は今年後半にはっきり増えます。

⚡ 自宅で充電するなら、電気の契約も一度見ておく
EVを買うかどうかに関わらず、自宅充電を考えている方に一つだけ。車両の話ばかりが注目されますが、充電コストは電気の契約プランで変わります。
idemitsuでんきには、クルマを持っている方向けの割引が用意されています。使用量が増えるほど1kWhあたりの単価が下がる設計で、市場連動型の追加料金がないため、月々の請求が読みやすいのが特徴です。解約金もかかりません。
ただし条件があります。クルマ特割の対象はSプランとオール電化プランのみで、EV向けの低圧・200V契約は対象外です。また沖縄県と離島は供給エリアに含まれません。割引額には上限があるので、申し込み前に公式サイトで自分の条件が合うかを必ず確認してください。
エリアと契約プランの条件が合う方は、確認してみる価値があります。
🔌 停電のときに、クルマから電気を取り出せるか
最近のEVには、車載バッテリーから家電へ給電できるV2L機能を持つモデルが増えています。BYDラッコもこの機能に対応しているとされています。
ただしV2Lを使うには専用のアダプターが必要で、取り出せる電力量にも上限があります。クルマだけで停電対策を完結させようとすると、思ったほど賄えないことがあります。
ポータブル電源を組み合わせておくと、EVの充電を温存しながら家電を動かせます。BLUETTIは容量と出力の選択肢が広く、必要な家電から逆算して選びやすいメーカーです。
災害時にクルマを移動手段として残しておきたい方は、検討してみてください。
🌿 まとめ|「待つ」を選ぶなら、期限を決めておく
2026年の全固体電池は、パイロット生産と搭載試験の段階です。トヨタ・日産・ホンダはいずれも2027〜2028年の市場投入を計画していますが、耐久性の課題が残っており、計画どおりに進むかはまだ確定していません。
一般の人が普通に買えるようになるのは早くて2027年後半から2028年、普及価格帯は2030年代以降という見方が有力です。「少し待つ」つもりが数年になる可能性は、あらかじめ織り込んでおいたほうがいいと思います。
待つこと自体は悪い判断ではありません。ただ「いつまで待つか」を決めずに待つと、車検を2回通して補助金の条件も変わった、ということが起こります。
今のクルマの車検がいつ来るか。それだけ先に確認しておくと、待つか買うかの答えは、意外とすぐ出るかもしれません。
維持費の面でEVがどう違うのかは、こちらで整理しています。



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