「TXがBEVになるらしい」──この噂を耳にしたとき、あなたが感じたのは期待でしょうか、それとも懐疑でしょうか。
かつてRX Lが挑み、しかし主役にはなりきれなかった「レクサスの3列SUV」という課題。その正統な後継であり、北米で圧倒的な支持を得ている「TX」が、もしBEV(電気自動車)専用モデルとして日本で生産・発売されるとしたら。
それは単なるラインナップの追加ではありません。レクサスが電動化という荒波の中で、いかにして「日本発のラグジュアリー」を再定義しようとしているのか。その答えが、この一台に凝縮されているのです。
現時点で公に語られている情報を紡ぎ合わせ、TXが切り拓く「未来の輪郭」を深掘りします。
⚡ TX BEVが変える「3列SUV」のパワーバランス

これまでレクサスの3列シートモデルは、既存のプラットフォームを「延長」することで成立していました。しかし、新型TX(あるいはBEV版として噂される名称「TZ」)がBEV専用設計となるならば、そのパッケージングは根本から覆ります。
エンジンという巨大な重量物をフロントから取り払い、床下にバッテリーを敷き詰める。これにより、全長5,100mmという巨躯でありながら、従来のガソリン車では不可能だった低重心と、圧倒的な足元空間の広さを両立できます。
「3列目は予備」という妥協は、もうここには存在しません。「すべての席が特等席であること」。これこそが、電動化によってレクサスが手に入れた新しい自由なのです。
📏 全長5,100mm、日本が誇る「巨大な静寂」

予想されるボディサイズは、全長5,100mm × 全幅1,995mm。 日本の都市部では持て余すサイズかもしれません。しかし、あえてこのサイズで挑むことには明確な意図があります。
- キアEV9など海外勢への対抗: 世界市場で激化する3列BEV SUV競争において、レクサスの存在感を誇示する。
- 「多人数乗車×BEV」の最適解: 重いBEVだからこそ、ホイールベースを伸ばして安定性を高め、ラグジュアリーな乗り心地を最大化する。
デザインについても、北米で評価の高いTXの力強さをベースに、BEV特有のグリルレスな意匠(スピンドルボディ)が組み合わされると予想されています。
🔋 74kWhという容量以上に注目すべき「質感の深化」

現在噂されている「74kWh」というバッテリー容量。航続距離を最優先する昨今のトレンドから見れば、控えめな数字に見えるかもしれません。しかし、ここにレクサスの「現実的なラグジュアリー」が透けて見えます。
巨大すぎるバッテリーは車重を増やし、乗り心地のしなやかさを奪います。レクサスが狙うのは、スペックシート上の航続距離ではなく、「降りたあとの疲労感の少なさ」ではないでしょうか。
150kW(フロント)/80kW(リア)のツインモーターによる「DIRECT4」制御は、加減速時の揺れを最小限に抑え、多人数で移動する際も車酔いを防ぐ、魔法のような乗り味を提供してくれるはずです。
🏭 「日本生産」がブランドに吹き込む魂

特筆すべきは、この大型BEVが「日本の工場で生産される」という予測です。
現在、北米向けTXはインディアナ州で生産されていますが、次世代BEVのフラッグシップを日本で造るということは、レクサスの核である「匠の技」を電動車にも注ぎ込むという意思表示に他なりません。
「EVはガジェットに近づいた」と言われる時代。だからこそレクサスは、日本生産による「緻密な建て付け」や「素材の吟味」で、デジタルな乗り物にアナログな体温を宿そうとしているのです。
🌍 日本導入への期待と、TXが変える未来

正式な日本導入のアナウンスはまだありません。しかし、トヨタが北米産のハイランダーBEV等を日本に導入する検討を始めているという報道もあり、そのレクサス版であるTX(TZ)の国内展開は、極めて現実的なシナリオと言えます。
1,000万円を超えるであろう価格帯。しかし、それは単なる移動手段への対価ではなく、「家族や大切な仲間と、これまでにない静粛な空間を共有する体験」への投資です。
レクサスTX。それは、高級車が「所有する喜び」から「過ごす時間の質」へとシフトしていく、象徴的な一台になるでしょう。


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