かつて、日本の街中を「ブルドッグ」の愛称で駆け抜けた伝説のマシンを覚えていますか?
1980年代、ホンダが放った「シティターボII」は、小さな体に過剰なほどのパワーを詰め込んだ、まさに“アナログな狂気”の象徴でした。
時代は流れ、2026年。
静寂と効率が支配するEVシフトの波の中で、ホンダは再び「遊び心」という名の劇薬を投じました。その名は、スーパーワン(Super-One)。
単なる電動化モデルではありません。ギアシフトの唸りを擬似的に再現し、ワイドフェンダーで武装したこの車は、効率性を求める現代へのアンチテーゼです。今回は、量産モデルとして姿を現したこの「令和のブルドッグ」の真価を、情熱的に紐解いていきます。
🐕 伝説の「ブルドッグ」再臨!ワイドボディに込められた執念

スーパーワンを一目見た瞬間、往年のファンなら胸が熱くなるはずです。ベースとなる「N-ONE e:」の面影を残しつつも、その姿は完全に別物へと変貌を遂げました。
特筆すべきは、その圧倒的な存在感を放つブリスターフェンダーです。

全幅は標準モデルから98mm拡大され、1,573mmに。この拡幅により、軽自動車の枠を超え「登録車(乗用車)」のナンバーを背負うことになりました。

あえて規格を飛び出したのは、走行性能への妥協を許さなかった証です。
マットベルリナブラックの15インチアルミホイールと、路面を掴むワイドなヨコハマタイヤの組み合わせは、まさに現代に蘇った「ポケットロケット」そのものです。
⚡️ 94馬力の衝撃!「ブーストモード」が呼び覚ます加速の記憶

スペック表の数字だけを見れば、驚くような大出力ではないかもしれません。しかし、このスーパーワンが秘めているのは「体感のドラマ」です。
フロントの電気モーターは、ブーストモード時に**最大出力94馬力(70kW / 95PS)**を発揮。N-ONE e:の64馬力から約1.5倍のパワーアップを果たしました。
かつてのHonda e(154馬力)には届きませんが、軽量なボディと専用チューニングされたサスペンション、そして低重心なEVシャシーが組み合わさることで、コーナーでのキレは往年のホットハッチを凌駕するレベルに達しています。
🔊 ギアチェンジの「真似」?いや、これはホンダ流のエンターテインメントだ
一部の批評家は、EVなのにエンジンの唸りやギアシフトの感触を再現することを「模倣」と呼ぶかもしれません。しかし、私たちホンダファンが求めているのは、無機質な移動ではなく「高揚感」ではないでしょうか。
スーパーワンには、8スピーカーのBoseプレミアムオーディオシステムを介した「アクティブサウンドコントロール」が搭載されています。

ブーストモードをオンにすれば、7インチのデジタルメーターはタコメーターへと切り替わり、加速に合わせて刻まれる擬似的なシフトショックとサウンドが、ドライバーの五感を刺激します。

これは単なるフェイクではなく、デジタル技術を使って「アナログの楽しさ」を再定義しようとするホンダの挑戦なのです。
🎨 専用色「ブーストバイオレット」に宿る稲妻の魂
カラーラインナップにも、この車のキャラクターが色濃く反映されています。専用色として用意された**「ブーストバイオレットパール」**は、稲妻からインスピレーションを得た刺激的な色彩。

室内にもパープルのアクセントが散りばめられ、ホールド性を高めた専用シートが「本気」の走りを予感させます。

価格は300万円〜350万円(約19,700ドル〜22,900ドル)をターゲットに調整中とのこと。決して安くはありませんが、最新のADAS(先進運転支援システム)や充実した快適装備、そして何より「所有する喜び」を考えれば、これは未来への投資と言えるでしょう。
🌏 日本から世界へ。冷徹なEV時代に火を灯す一台

スーパーワンは、日本での発売を皮切りに、英国、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア太平洋市場へと展開されます。かつてのシティがそうであったように、この小さなホットハッチが世界中のストリートを笑顔に変えていく光景が目に浮かびます。
効率や航続距離だけがEVの価値ではありません。ハンドルを握った瞬間にニヤリとしてしまう、あの感覚。ホンダはスーパーワンで、私たちが忘れかけていた「車と対話する喜び」を、電気の力で見事に再現してみせたのです。


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